【エッセイ】蘇る「好き」新しい「好き」(10年ぶりに音楽を聴いた話)(3000文字)

2025/10/18

エッセイ・感想

t f B! P L

 

 音楽は好きなほうだったが、結婚してからはほとんど聴かなくなった。新しい生活に適応していくにつれ、自然と「音楽を能動的に聴く」という習慣が薄れていったのである。

 音楽を聴くとしたら時々、作業時にアマゾンエコーショー(いわゆる「アレクサ」)でおまかせで適当にBGMを流すぐらいになった。

 アレクサで再生する音楽は聞き流すだけで能動的な聴き方はせず、どんな音楽が流れているかは意識しないで聞いている。音楽を聴いてるというより、環境音を流しているといった感じである。

 音楽を能動的に聴かなくなった代わりに、5歳の頃からの趣味であるゲームをプレイする時間が増えた。

 面白そうなゲームを見つけては購入してプレイする日々を送るうちに、私は「能動的に音楽を聴く」ことなどすっかり忘れた。私が余暇にする娯楽はほぼゲーム一色となっていった。




 そんな私だが、今年に入ってゲームを楽しめなくなったことが増えた。
 5月にはとあるRPGのプレイに挫折。7月には当時の話題作を購入してプレイしたがこれも序盤でプレイ放棄。
 めげずに8月、9月と別のゲームの体験版をそれぞれプレイするも、やはり楽しめない。

 ゲーム以外に趣味を持たない状態となっていた私は楽しみを失って困り果てた。

 そこでTというネット上の掲示板で相談したところ、その掲示板の運営者であるD氏に「そろそろゲーム以外のコンテンツに目を向ける時期では。せっかくなら(ゲームはずっと音楽が鳴っているので)ゲーム繋がりで音楽とかどう?」という回答を授けられた。

 音楽か。そういえば昔は、聴くアーティストが偏っていたとは言え、よく聴いていたな。すっかり忘れていた。

 しかし、音楽をちゃんと聴かなくなって10年は経っている。今更楽しめるだろうか。最近の音楽も全然知らないし、もともと偏った聴き方をしていたから、最近のアーティストでなくても知らない音楽・ミュージシャンだらけだ。どんな音楽がこの世に存在しているかも忘れてしまっている状態である。

「……でもまあ、聴いてみるか」

 再び音楽を楽しめるかどうか懐疑的だった私だが、減るものでもないし、試しに音楽に向き合ってみることにしてみた。



 手始めに、Fire TV Stickで映すYouTubeで音楽を普段からよく聴いてる夫が、どのようにYouTubeで音楽を探し出しているのかを観察した。夫はYouTubeでMVを流しながら動画下部にある関連動画のサムネを閲覧し、そこから気になったMVを再生しているようだった。

 夫が席を離れた隙にFire TV Stickのリモコンを手に取り、YouTubeのアカウントを自分のものに切り替えて夫の真似してみる。存在を忘れていた、昔よく聴いていた好みの音楽をいくつか見つけることができた。

 なるほど、これはいい。
 久しぶりに能動的に聴く音楽は心地よかった。YouTubeで流れる音楽のリズムに合わせて体を揺らしながら、ああ、こんな感じで意識的に音楽を聴いていたっけと私は懐かしさを覚えた。

「能動的に聴く音楽」の良さを味わった私はもっと色んな音楽を聴きたいと思い、音楽の探し方をパープレキシティ(検索特化型AI)で探した。「Last.fm」という検索結果が表示された。

 Last.fmは10年前、私も利用していた音楽特化型SNSである。

「そんなサービスもあったな」と思い出した私はLast.fmのアカウントを復旧させてみたが、好みの音楽は見つかられなかった。

 地道に試行錯誤しながら探していくしかないか。

 そう感じた私は「YouTubeに課金しているのだからYouTube Musicを無制限に利用できる」ということに気づき、YouTube MusicをFire TV Stickにキャストさせて音楽を手当たり次第に再生した。

 まず、知っている音楽で、好みのものを再生する。曲が終わりそうになったら「関連コンテンツ」を表示し、そこから気になった曲名をタップしてその曲を聴いてみる。「好き」と感じたら「高評価(いいね)」をタップして好みをアプリに学習させ、曲が終わりそうになったらまた「関連コンテンツ」で別の曲を探す。好みでなかったらすぐに「関連コンテンツ」で違う曲を探す。

 この方法で好みの曲をいくつか見つけ出したが、YouTube Musicには1億曲もの楽曲が提供されている。好きな曲に一瞬出会うことはできても、1日も経てば誰のどんなタイトルの曲を「いいね」したか忘れてしまう。

 音楽を楽しめるは楽しめるけど、ちょっと刹那的すぎる気がする。刹那的に楽しむのもいいが、もっとこう、「この曲がいい! タイトルもアーティストも覚えた!」みたいな出会いが欲しい。

 そう思いつつYouTube Musicを利用するようになってから2日後、アプリでおまかせで音楽を流していた時である。「好き」と感じた曲を歌うアーティストを1つ1つ確認しながら聴いてみたところ、サカナクションの曲が多いことに気がついた。

 サカナクションは存在は知っていたが、彼らの楽曲をちゃんと聴いたことはなかった。サカナクションに興味を持った私は、YouTube Musicで彼らのアルバムを聴けないだろうかと考えた。

 アプリを適当にタップしてみる。聴ける。アルバム単位で聴ける。
 音楽サブスクをよく利用する人なら常識なのかも知れないが、10年も音楽を聴いてこなかった私は「サブスクでアルバムが聴けるんだ……!」と驚いた。

 こうなればしめたものである。私はサカナクションの1stアルバムを聴いてみた。好きだと感じる曲がかなり多い。
 翌日、他のアルバムも聴いてみたが、やはりサカナクションの曲は好みのものがとても多かった。

 出会えた。私は確信した。この歳にして新たな「好きなバンド」に出会えた。なんと喜ばしいことだろう。

 私は「好きと思った曲のアーティストのアルバムを聴いてみる」という方法を他のアーティストでも試した。
 サカナクションほどグッと来るアーティストにはなかなか出会えなかったが、音楽を能動的に聴くようになってから3週間後。Vaundyの曲も好みのものがとても多いことを発見した。2つ目の出会いである。

 音楽を能動的に聴かなかった期間が10年もあっても、新しく「好き」と感じるアーティストと出会えた。この事実は私に深い喜びを与えた。

 新たな「好き」なアーティストを発見したことで、音楽を聴くことがより一層楽しいものとなった。
 私は音楽を聴き続け「楽しめるじゃん、音楽」としみじみした。10年のブランクがあっても、好きなものは好きなのだ。

 当たり前といえば当たり前なのかも知れないが、己の趣味嗜好を再確認できてとても嬉しい。

 こうして私はかつての趣味を復活させ、サカナクションとVaundyという新たな「好き」も手に入れたのだった。



 以来、私はサカナクションとVaundyを中心に、毎日Youtube Musicで音楽を聴いている。

 今日はどんな「好き」な曲と出会えるだろうか。サカナクションやVaundy並に気に入るアーティストを発見できるだろうか。

 この世に音楽がある限り、「好き」なアーティストと楽曲はどんどん増えていくと信じている。
 復活した私の音楽ライフもこれからもっと充実していくことだろう。

 それもこれも、あの日掲示板で私に音楽を勧めてくれたD氏のおかげかも知れない。
 D氏に感謝しつつ、私は今日も音楽を楽しんでいる。
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