【エッセイ】頑張ると倒れる私が、ちょっとだけ頑張れるようになった話(1600文字)

2026/01/18

エッセイ・感想

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 私は持病の関係で体力がとても低い。

 結婚したばかりの頃、人並みに家事をやろうと毎日一生懸命に働いたら、高熱を出して寝込んだ。

 その後もちょいちょい持病をこじらせて寝込む。頑張って働いては寝込み、回復してまた頑張って働いては寝込む……というサイクルを繰り返す。

 そのため、私が家事をやる範囲は次第に減っていった。
 申し訳ないと思いつつも、頑張るとすぐに寝込んでしまうのだからどうしようもない。

 そのうち、私は無理に家事をしないようになっていった。少しは家事をするけど、「あくまで無理のない範囲」に。




 無理に家事をしないようになって8年後、私たち夫婦は一軒家に引っ越した。

 新生活に張り切る私。結婚当初の頃のように再び、毎日一生懸命、頑張って家事をした。

 その結果、私は持病をこじらせにこじらせ、1ヶ月半の入院となってしまう。これには参った。

「私は頑張ったらいけない。頑張って働いたら却って夫に迷惑をかける。なるべく活動を抑えて静かに過ごそう」

 痛感した私は退院後、夫に任せる家事の範囲を更に広げた。「夫に頼らないと私はほとんど何もできない」と感じながら日々を過ごす。




 退院してから5年後。12月下旬、夫がインフルエンザに感染した。

 夫がインフルエンザに感染するのは結婚してからの10数年で初めてのこと。「夫を看病する」というシチュエーションになったのも初めてのことだ。

 私は大慌てでインフルエンザの看病方法と感染対策を調べ、39℃の高熱に苦しむ夫を看病した。

 2時間に1回、コップ1杯のポカリスエットを持っていって水分補給をさせる。朝昼晩の3回、ウィダーインゼリーでカロリーを補給させる。朝と晩に、市販薬のカロナールを飲ませる。毎晩、着替えをさせ、歯磨きシートで歯を磨かせる。

 感染対策も徹底した。夫は2階に隔離。2時間に1回、10分の換気。2階に行った後は手洗いうがいを徹底。夫が1階に来たあとは1階の換気と、ドアノブの消毒。

 その間に、できうる限りの家事をすべてやる。料理、洗濯、ごみ捨て、買い物等々、何から何までこれでもかと家事をやる。

 体力のない私には、これらの活動をいっぺんにやるのは大変な重労働だった。それでもやるしかない。夫を完治させなければという使命感が、私に実力以上の力を与えたのだろう。

 私まで感染して夫婦共倒れにならないよう、懸命に夫を看病し、感染対策をし、家事を回す。ただただ「夫を救いたい」という一心で、働いた。

 張り詰めた気持ちで夫の看病を続けて6日目、夫は回復した。ほっと胸を撫で下ろす私。
 同時に、頑張っても持病をこじらすことなく、看病も家事も無事にやり遂げていた自分に気がついた。

「頑張ると倒れる」と思い込んでいた私だが、実際はそうでもなかったようだ。「夫を救いたいという愛のおかげで倒れなかった」とするのは簡単かも知れないが、低体力を改善しようと2ヶ月前からできる範囲でウォーキングを続けていたので、少しは体力がついていたのかも知れない。

 やればできるじゃん。私は誇らしいような気持ちになった。
 やればできる。私でもできる。持病があっても、体力が低くても、私でもできる。夫の世話になりっぱなしではない。

 こうして私はちょっとした自信を手に入れたのであった。




 以来、私は日々の活動の範囲を広げるよう、意識するようになった。

 持病は完治していないし体力も急激に増加したわけでないので、無理はそんなにできないのは変わらない。でも「夫に頼らないと何もできない」という意識は確実に変わった。

 ウォーキングを続けつつ、やれる範囲で少しずつちょっとだけ頑張って活動して、倒れる前に休む。回復したらすぐにまた活動すればいいのである。無理をしなくても工夫すれば、活動できる範囲はもっと広がっていくだろう。

 こうしているうちに、私の持病も良くなるかも知れない。夫の負担を今よりもっと減らせるようになるかも知れない。

 そんな希望を抱きながら、私は今日も倒れないよう体調に気を配りつつ、ちょっとだけ頑張っている。

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